月刊『日本橋』 2015年12月号 No.440

特集  日本橋で忘年会

今年もこの季節がやってきました。
美味しい料理に舌鼓を打ちながら、無礼講もよし!
日本橋で一年の疲れを癒して楽しい年末を!

2015忘年会_再校

【今月の表紙】
木曽街道六十九次之内 醒ケ井 金井谷五郎
大判 嘉永五年(1852) 辻岡屋版

 

【12月号連載】人物語 第261回 中地美佐子さん

ENT_2059a

日本橋には12月になると、多くの人に毎年待ち望まれる特別なコースがある。買い物や食事の合間に、三越劇場で上質な劇団民藝の芝居を観劇、感動で潤った心と共に年を越す贅沢コースだ。

 

今年の演目は、俳人・正岡子規を支えた家族の物語『根岸庵律女—正岡子規の妹—』。数々の人間味溢れる名作を生み出した劇作家・小幡欣治が愛情を持って描く正岡子規の妹役〈律〉を演じるのは、劇団民藝の次代を担う実力派女優、中地美佐子。今回親子役で共演する奈良岡朋子だけでなく、今は亡き北林谷栄や大滝秀治など劇団の大先輩と共演を重ね、名優の演技力を間近に見、受継いできた。

 

奈良県の法隆寺近くの町で育ち、「小さい頃から表現者になりたかった。でも恥ずかしくて」と、意外にも演劇部に入る勇気はなく悶々と過ごしていた時……(続きは本誌で!)

【12月号連載】逸品 宇田川 豚ロースカツ定食

 

清々しい檜のカウンター、オープンキッチンの中では、若旦那の宇田川伸一さんが慣れた手つきでカツを揚げている。群馬県産の厚切りの豚ロース肉に小麦粉をまぶしてよくはたいたら、溶き卵にくぐらせ、丁寧に生パン粉を付けて、大鍋の油の中にそっとすべり込ませる。と、じゅわじゅわっと大きな音が広がる。「160度の低めの温度で5〜6分。きつね色になるまで揚げます。ひっくり返したりしないで、じっくり」と、伸一さん。気泡の大きさと音の変化で、ちょうど良い揚げ上がりを見極めるのがプロの技。カツが揚がったら、さくっさくっと切り分け、……(続きは本誌で!)

【12月号連載】新連載スタート! 東京っこ身の丈語り 林えり子

「早くしないと日が暮れる」

うちの中の者が言うのである。宿題そっちのけで本読みに耽っていると、母が言う。向うの座敷では片付けに手間取っている祖母に、おじいさんが言う。

日がまだあるというのに日が暮れるとは無理無体な話だが、家族の誰もがそりゃないでしょ、とは言わない。おはよう、おやすみと同じ、常套句だった。

江戸東京の人間は、愚図々々言わずに物事に早くケリをつけながら生涯をまっとうしたいのである。心身に纏わりつくちり芥をさっさと振り払って、しゃっきりしゃんとする様が粋だと考え、対極の「もたもた」なんど「のろまのとんかち」、優柔不断など「野暮の骨頂」と舌打ちする。

ということで「日が暮れる」と言いながら手早さを身上に暮らしてきた。

……(続きは本誌で!)